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佐賀から文壇へ羽ばたく新星 薬剤師と小説家の二刀流で注目の愛野史香さん
スマートフォンひとつで物語を紡ぎ、薬剤師として働きながら文壇へ――。
今、嬉野市出身の小説家・愛野史香さん(33)が、2024年の角川春樹小説賞を満場一致で受賞し、注目を集めています。
デビュー作『あの日の風を描く』に込めた思いと、異色の創作スタイル。その素顔に迫りました。
満場一致の受賞作『あの日の風を描く』
受賞作『あの日の風を描く』は、挫折を経験した美大生が、江戸時代の襖絵の複元模写に携わりながら成長していく姿を描いた物語です。
他作品とかぶらない題材を探す中で出会ったのが「複元模写」という世界。しかし愛野さんにとっては、あまりにも専門分野外だったといいます。
そこで始めたのが徹底的なリサーチ。
東京藝術大学の教科書を購入し、日本画の教科書を何冊も読み込み、大学院生の卒業論文まで読み漁る――。
地道な取材の積み重ねが、物語に確かなリアリティを与えています。
物語は“最後の一文”から始まる
愛野さんの創作で特徴的なのが、「最後の一文を最初に決める」という手法です。
「終わりの一文は最初から決まっています。今のところ、書いている作品は全部そうです」
ゴールテープを切る瞬間を先に定め、そこへ向かって物語を組み立てていく。「そこまでを、どんな道順で走るかという感じ」と語ります。
明確な終着点があるからこそ、物語はぶれずに進んでいきます。
スマートフォンで書くという選択
愛野さんの創作スタイルは、さらにユニークです。
「スマートフォンで書きます」
移動中や待ち時間、街を歩いているときでも、ふと湧き上がった言葉をすぐに書き留める。場所や道具に縛られない創作スタイルは、多くの人にとっても身近で、勇気づけられる姿です。
文章が苦手だった小学生時代
意外にも、子どものころは文章を書くのが得意ではなかったといいます。
作文は苦手で、読書感想文をどう乗り切るかを考えていた小学生時代。
そんな愛野さんが創作に目覚めたのは、福岡大学を卒業した後のことでした。
インターネット上で、アマチュアでも自由に作品を発表できる世界を知り、「プロでなくても書いていい」と衝撃を受けたことがきっかけでした。
そこから趣味として小説を書き始め、その歩みが受賞へとつながっていきます。
薬剤師との“二刀流”が生む集中力
現在も薬剤師として勤務しながら執筆を続ける愛野さん。
二足のわらじは大変そうに思えますが、創作はむしろ“息抜き”になるといいます。
「集中して書けているときは没頭して、ほかのことを忘れられる」
小説の魅力については、
「他人の内面を深く知ることができるのは小説が一番。言葉にできない感覚で心に刺さることがある」と語ります。
文学への真摯な思いが伝わります。
地元・嬉野で書き続ける姿
執筆の拠点のひとつが、嬉野市の和田屋別荘内にある書店です。ゲラ(校正刷り)の期間には、ここで仕事をすることも多いといいます。
これからも佐賀県の盛り上がりにかかせない存在です。
まとめ
薬剤師として人々の健康を支えながら、スマートフォンで物語を紡ぐ愛野史香さん。
2024年の角川春樹小説賞受賞をきっかけに、その名は全国へ広がりました。
道具も場所も選ばない。
それでも物語は生まれる――。
嬉野市から羽ばたく新たな才能。
愛野史香さんがこれからどんな“最後の一文”へ向かって走っていくのか、注目が集まります。

