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2021.03.09

3.11を忘れない⑪ 故郷に「戻る」「戻らない」の選択

東日本大震災から10年。

FNN取材団としてサガテレビも被災地を取材してきました。

記者とカメラマンが目にした被災地の動画をサガテレビのホームページに一挙に掲載します。

未曾有の災害を忘れないために・・・

取材をめぐる当時の状況

震災から3年以上が経っても原発事故による汚染への不安は被災者を苦しめ続けています。避難指示が解除されても、故郷に「戻る」「戻らない」の選択は簡単ではありません。原発事故の深刻さ、根深さは時の経過とともに浮き彫りになってきます。そして、原発事故後、停止していた全国の原発は、再稼働に向けた動きが次第に加速してきました。

【放送:2014年5月22日】

サムネイル

サガテレビの江口記者がFNN取材団として、1週間、福島第一原発に近い福島県の東部、浜通り地区を中心に取材しました。

原発事故から3年経った今もなお仮設住宅で避難生活をおくる人たち、そして放射能への不安を抱えながらもふるさとへ戻った人たち、福島ではさまざまな選択をした人たちに話を聞くことができました。

福島第一原発から20キロあまり南に位置する広野町。メイン通りではすでに営業を再開している店がある一方で、いまだ町民の8割近くが町外で避難生活を送っています。

福島県東部に位置する広野町。原発事故後は全町避難を余儀なくされました。おととし3月には避難指示が解除されたものの、町に戻ってきたのは町民の2割程度です。

(町に戻った人は)

「避難していたかったが、犬がだめなので戻ってきた。こっち来たって水は出ないし、生活も不便だし。私はそんなに放射線量をみると戻れない状態だとは思っていない」

広野町で精肉店を営む女性。震災から4カ月後に営業を再開しました。

(福島・広野町の精肉店)

「放射能がこわいという方はなかなか戻れない。その気持ちもわかります。ただ私たちは仕事をしなければならないので、待っている人もいるのでやっている」

農業が町の基幹産業だった広野町。折木地区では、原発事故前に50戸以上あった農家のうち、事故後、農業を再開したのは10戸未満にとどまっています。風評被害の影響などでやめた人も少なくありません。5ヘクタールでコメを栽培する農家。原発事故後、広野町で農業を再開した一人です。

(コメ農家)

「私は風評ありましたよ。原発事故後、再開してお客さん帰ってきたのが3割弱ですからね」「農業をやめるという考えは、私は一回も持ったことがないので、逆にこのくらいの壁は超えてやるみたいな、そういう風に思わないとやっていけない。ああもうだめだ、売れない、やめるじゃなくて」

今も風評被害とたたかう農家。原発の再稼働には「絶対反対」と話す一方で、雇用などの面で原発に頼らざるを得ない町の難しい現状もあるといいます。

(コメ農家)

「きっと原子力発電は長続きしないんじゃないかな、長続きしてほしくない。どこも原発が建つところはへき地なわけだよね。じゃあ仕事どうすんだとなったとき地元に仕事ってほとんどないから。全然関連のないような職種でも結局原発関係のなんかの影響を受けているわけですよね。難しい問題、すごくみんな生活がかかっているから。原発やめて明日から仕事なくなっちゃうという人もいると思う。それはそれで考えないといけない」

広野町の人口は先月末現在で5100人あまりですが、町内に住んでいるのは約1400人にとどまっています。避難指示が解除された今も町民の8割弱が町外で避難生活を送っています。

広野町の人たちが避難生活を送るいわき市の仮設住宅。いまだ500人以上の方が避難生活を送っていて4割以上が65歳以上の高齢者です。仮設住宅を管理する女性は今も家族離れ離れの生活です。

(仮設住宅を管理する女性)

「広野町は帰れるけれども、帰れないというのがなかなか難しい。やっぱり放射能、原発への不安が一番だと思う」

原発事故後、停止していた全国の原発。再稼働に向けた動きが加速しつつある現状についてききました。

(仮設住宅を管理する女性)

「これだけ被害があるんだから、なるべくなら原発を動かさない方がいい。違うものがあればいいんじゃないかと思う。まだこうやって3年たってもいつ元通りになるか、事故収束は何十年も100年近くかかるのか、それもわからないしね」

仮設住宅では佐賀県出身の女性にも出会いました。原発事故後は避難所を7、8カ所転々とし、その影響で体調を崩しました。

(佐賀県出身の女性)

「今までの生活がガラッと変わってしまった。やっぱり自分の家があるから町に帰りたいと思っても、今の生活がある。不便で帰ろうにも帰れなくて」

この女性は、自分たちのような思いを二度と若い世代にさせたくないと原発再稼働には反対します。

「絶対反対、絶対反対ですね。こんな思いはみんなにさせたくないもんね」

(終)

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