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2021.03.09

3.11を忘れない⑩ 風評被害深刻な農業

東日本大震災から10年。

FNN取材団としてサガテレビも被災地を取材してきました。

記者とカメラマンが目にした被災地の動画をサガテレビのホームページに一挙に掲載します。

未曾有の災害を忘れないために・・・

取材をめぐる当時の状況

徐々に復興への道を歩み始めている被災地にとって、なかなか払拭されないのが「風評被害」です。農漁業への打撃は大きく、農業、漁業の存続が危ぶまれる状況は深刻さを増していました。

放送:2013年5月31日

サムネイル

東日本大震災の発生から2年が過ぎました。福島のいまを今月20日から1週間、取材しました。様々な形で復興が進められる一方、原発事故による見えない放射線の影響で、いまだに様々な風評被害に悩まされています。

福島県二本松市、旧渋川村の吉倉地区は、おととしのコメが、当時の環境基準値の500ベクレルを超えたため、去年は作付けが見送られましたが、今年から作付け制限が解除され田植え作業がはじまっています。

(旧渋川村の農家)

「不安がある。作っても、また福島のやつは風評被害で他の産地よりも安い。そうすると生産費に合わない。そう。利益が出ない、作っても。」

旧渋川村は、国の方針に従い、県や市が策定する管理計画に基づいて作付けを行う、全量生産出荷管理地域です。東京電力の賠償の対象エリアで、売れないコメを作るよりも、補償をもらったほうがいいと考え、作付けしない農家も増えているといいます。二本松市では塩化カリウムを圃場に撒いて、稲のセシウムの吸収を抑制する対策を取っています。

(二本松市産業部農政課 課長)

「塩化カリ分が、現在のセシウムの成分と似ているので、優先的にセシウムではなくてカリのほうを吸っている。だから稲の放射性物質の取り込みが少ない」

しかし、土に入った放射性物質を取り除くものではないので消費者の信頼回復につながる根本的な解決策にはならないと言います。

(旧渋川村の農家)

「土造りやってきて今まで、いい土になってきたんだけど、それに対してセシウムが入ってしまった。放射線の元素が、それをまるっきり除くことは全然しないわけだ。それを私たちは除いてもらいたい。それを米に吸収しないからいいという方法じゃ、これは除染じゃないでしょう。完全に」

また、別の農家では、500ベクレルから100ベクレルへとコメの安全基準値が変わったことが消費者の混乱を招いたと指摘します。

(旧渋川村の農家)

「コメをやると言っても誰ももらっていかない。やっぱり安全基準値の数字がここから大丈夫だ、絶対大丈夫だと言ってくれるならば大丈夫だけど。この辺で生まれた人だってもらっていかないんだから…」

一度落ちたイメージを回復するため、コメ袋すべての検査を継続して、一袋も基準値を超えないという状況を作ることが重要で、その継続が、産地としての信頼回復につながると農家は考えています。一方で安全性の確保だけでは農産物の風評被害の払しょくは難しいとも話します。

(二本松市産業部農政課 課長)

「消費者の方々にとってそれが決められた安全基準なのか、ゼロでもその土地そのものは嫌だという考えが残っている限りにおいては、なかなかイメージ回復というのは難しいものがありますね」

一時は1755ヘクタールまで落ち込んだ二本松市の作付け面積、今年は2006ヘクタールで震災前の2010年の9割程度まで回復しています。

(終)

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