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2026.05.10

鳥栖の山間に佇む禅寺「萬歳寺」で坐禅と茶粥を体験——静寂の中で心をリセットする旅

「汚れきった心を洗いに行く」——。
そんなひと言から始まった、鳥栖の山奥への小さな旅。

今回訪れたのは鳥栖市。交通の要衝として知られ、新幹線で通り過ぎるイメージを持つ人も多い街ですが、少し山あいへ足を伸ばすと、静かな時間が流れる歴史ある禅寺が佇んでいました。

体験するのは、心を整える坐禅。そして、境内で育てた茶葉を自家焙煎し、そのお茶で炊き上げる「茶粥」です。

鳥の声だけが響く境内、背筋を伸ばして向き合う静寂の時間、やさしく体に染みわたる一杯——。
慌ただしい日常から少し離れ、自分自身と向き合う“心を整える旅”をご紹介します。

「いつも通過していた」鳥栖の意外な一面へ

鳥栖市といえば、九州をつなぐ交通の要衝。
県内外から多くの人が行き交い、新幹線や高速道路のイメージを思い浮かべる人も多い街です。

そんな鳥栖の“意外な一面”を探しに、今回は街の喧騒を離れ、山あいへと向かいました。

車を走らせるにつれ、景色は少しずつ静かな山の風景へ。
たどり着いたのは、ひっそりと佇む禅寺「萬歳寺」です。

石灯籠が並ぶ境内には、どこか凛とした空気が漂い、鳥のさえずりだけが静かに響いていました。
その入口で、住職が穏やかな笑顔で迎えてくれます。

日常の慌ただしさから、ほんの少し距離を置く——。
そんな時間が、ここには流れていました。

住職直伝で学ぶ、坐禅の作法

住職に案内され、まず体験したのは坐禅。
畳敷きの静かな禅堂に通され、張りつめた空気の中で、坐禅の作法を一つひとつ教わっていきます。

背筋をすっと伸ばし、足を組む。
手は親指同士を軽く合わせ、目は閉じずに“半眼”——薄く開いた状態で、およそ1メートル先の畳へ静かに視線を落とします。

そして何より大切なのが呼吸。
住職は穏やかな声でこう語りかけます。

「吐く息を長く取ってください。心の中をすべて吐き出すように」

ゆっくり、ゆっくりと息を吐いていくと、不思議と頭の中のざわつきが少しずつ静まっていく感覚に包まれます。

それでも雑念が浮かび、心が乱れてしまうことも。
そんなときに用いられるのが、「警策(きょうさく)」と呼ばれる細長い棒です。

住職が肩を打つ乾いた音が、静かな禅堂に響く——。
その一打には、乱れた心を断ち切り、意識を整える意味が込められているといいます。

何もしない時間なのに、どこか自分と深く向き合っている感覚。
坐禅には、日常ではなかなか味わえない静けさが流れていました。

境内で育てたお茶で炊く「茶粥」——禅寺の朝食文化

坐禅で心を整えたあとに振る舞われたのは、精進料理の小鉢と、萬歳寺ならではの「茶粥」です。

禅寺では古くから、朝食にお粥をいただく文化が受け継がれてきました。
萬歳寺の茶粥は、境内で育てた茶葉を自ら焙煎し、丁寧に抽出したお茶でご飯を炊き上げる、昔ながらの製法で作られています。

運ばれてきたのは、赤い器に盛られた白くやわらかな茶粥。
見た目はとても素朴ですが、ひと口いただくと、お茶のやさしい香りとうまみがじんわりと広がります。

どこか懐かしく、体にすっと染み込むような味わい。
坐禅のあとの静かな心に、そっと寄り添ってくれるような一品でした。

食卓には、季節を感じる精進料理の小鉢も並びます。
たけのこを使った料理など、山の恵みを生かしたやさしい味付けが、茶粥のおいしさをさらに引き立てていました。

豪華ではないけれど、丁寧に整えられた食事。

「音を立ててはいけない」——食事にも禅の作法が

食事の時間には、禅寺ならではの作法もあります。

席につく前、住職から静かに告げられたのは、
「食事は一切、音を立ててはいけません」という言葉でした。

器を置く音、箸の音、すすり込む音——。
普段は気にも留めない動作ひとつひとつに、自然と意識が向いていきます。

その理由について、住職はこう説明します。

「要するに一心不乱に、食事のときは食事に専念せよ、ということで」

目の前の食事だけに向き合う。
それは、慌ただしい日常ではなかなかできない時間かもしれません。

さらに住職は、静かにこう言葉を続けました。

「食物とはいえ、命をいただいていることには変わらないですから。それにちゃんと向き合ってということですね」

ただ空腹を満たすのではなく、“命をいただく”ことを意識する——。
その考え方に触れると、一口ごとの重みまで少し変わって感じられます。

静寂の中で味わう茶粥と精進料理。
音を立てない食事には、自分自身と食べ物に丁寧に向き合う、禅の教えが息づいていました。

年に一度、自分を振り返る時間として

体験を終えたあと、緑に包まれた禅寺の庭で住職と向き合いながら、この静かな時間の意味をゆっくりとかみしめました。

木々が風に揺れ、水の音が静かに響く境内。
慌ただしかった頭の中が、少しずつ澄んでいくような感覚に包まれます。

坐禅をして、静かに食事をいただき、自然の中で呼吸を整える——。
一見とてもシンプルな体験ですが、その時間は、知らず知らずのうちに張り詰めていた心をやさしくほどいてくれます。

交通の街という印象が強い鳥栖市。
その山間には、今もなお、静けさと禅の文化が息づく場所がありました。

日常に少し疲れたとき、自分自身を見つめ直したくなったとき——。
ふと訪れたくなるような特別な時間が、萬歳寺には流れていました。

萬歳寺

住所:佐賀県鳥栖市河内町2118

【2026年5月5日放送 かちかちLIVE 小田井涼平と そいよかね!ツアーズ より】

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