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2021.03.09

3.11を忘れない⑥ 震災10か月の福島 復興の壁は除染

東日本大震災から10年。

FNN取材団としてサガテレビも被災地を取材してきました。

記者とカメラマンが目にした被災地の動画をサガテレビのホームページに一挙に掲載します。

未曾有の災害を忘れないために・・・

取材をめぐる当時の状況

震災から約10か月経った頃の福島。原発事故で広がった放射線による汚染が住民の生活を脅かし続けていました。取材スタッフの安全確保のため、引き続き線量計の携帯、放射線量の定期的な確認、記録、報告を継続していました。

放送:2012年1月27日

サムネイル

東日本大震災から10ヵ月。サガテレビの峰松記者がFNN取材団として福島入りしました。被災地の復興は進んでいるのか、峰松記者の報告です。

(峰松記者)

まず福島県の被害状況です。1月26日現在、死者1926人、行方不明者は61人となっています。震災から10ヵ月あまり経ちますが、6万2267人が県外に避難、さらに仮設住宅で暮らす人は3万1583人にのぼります。

私は福島での取材は今回で2回目です。前回は、発生から10日後に福島に入りました。当時は通行できる道も限られていましたし、水道といったライフライン、ガソリンや灯油など燃料もほとんどないといった状況でした。今回私が宿泊した福島市内のライフラインはほぼ復旧していました。しかし、原発から20キロ圏内「警戒区域」のスーパーでは、商品がケースに並べられたまま腐敗していて、震災当時から時が止まっています。放射線が警戒区域ほど高くない地域でも沿岸部は一から町を作り直さないといけないのでまだまだこれからです。

(キャスター)

今、一番の課題は?

(峰松記者)

先週の土曜日に福島県出身で横浜DeNAベイスターズの監督に就任した中畑清さんが津波で大きな被害を受けた南相馬市を訪れました。その南相馬市の桜井市長は一番の課題として「除染」をあげました。

中畑監督は・・・

「いま一番やらなければならないことは?何が課題?」

これに対し、南相馬市・桜井勝延市長は・・・

「一番は除染の問題。子供を持つ親の心配に対応することが最優先」

(峰松記者)

除染とは、原発事故の影響で土壌などが放射性物質に汚染されているため、土の表面を削りとったり落ち葉などがたまった側溝を掃除したりするものです。とにかく、この除染が進まないことには家に戻れない地域もありますし、生活は出来ても、通学路に放射線量が高い場所があると保護者が学校に送り迎えをしなければなりません。いわば復興の前提となるのが除染です。国は除染の工程表を示し、年間被曝線量が50ミリシーベルト以下の地域は2年後の2014年3月までに除染を終えるとしています。

(キャスター)

細野環境大臣も先週、国が福島市に設けた除染の拠点となる事務所の開所式で、「除染は福島にとって希望だ」と話していたように、まさに「除染」なくして次のステップには進めないわけですね。ところで、先週は汚染された疑いのある砕石が出荷され、コンクリートなどに使われたニュースがクローズアップされましたね。

(峰松記者)

私たちサガテレビの取材班も毎日、この問題の取材にあたりました。主に私たちが取材したのが、福島市の南に位置する二本松市です。この二本松市は子供たちの被曝線量を計っていてこの内、線量が高かった子供について原因を調べたところ、子供が住むマンションの室内から高い放射線が確認されました。

このマンションの基礎コンクリートには計画的避難区域に指定されている浪江町の採石場から出荷された石が使われていました。このマンションに住む世帯の多くは原発の近くから避難してきた人たちです。原発事故以降、避難所を転々とし、ようやく落ち着いたのが、このマンションだったという住人もいました。入居して5か月。家具などをそろえた矢先に再び放射線の問題に巻き込まれました。このマンションに住む世帯の多くが転居を希望しているといいます。

マンションの建設を手がけた業者は、水路工事も請け負っていました。線量は1・91マイクロシーベルトです。1・91という数字、周辺の線量に比べると非常に高い数値です。この問題はその後、広がりを見せていて二本松市の調査ではこちらの水路でも高い放射線が確認され、問題の石が使われた可能性が高いことがわかりました。

住民は・・・

「少し安心してきた部分があったが、新たにこういうのが見つかると不安で、また落ち着いて生活できないのでどうしていいか分からない」

「あそこは結構、散歩道になっている。中学生も通る。やっぱり困る」

二本松市は緊急に補修を行った道路などの放射線の調査を始めています。

線量は高くなかったものの学校の耐震工事などでも同じ石が使われた可能性もあり、不安が広がっています。建築資材として各地に流通したとなると、それをどうやって特定し、汚染された部分を取り除くのか新たな課題として浮上しています。

(キャスター)

なぜこの問題は広がったのか?

(峰松記者)

そもそも食品などのように建築資材には放射線量の出荷基準がなかったことが原因です。国は石やコンクリートの流通ルートを調べていて、今後さらに広がりを見せる可能性もあります。福島県にとって、放射性物質による汚染の問題は復興の大きな壁となっています。また、汚染の問題は建物やライフラインなどの復旧とは違い、目に見えない。地元の人たちだけでなく国民や世界の人たちの不安が解消されないことには、風評被害もあり観光や特産品の販路拡大など福島の力を発信できない。見えない敵との戦いは相当な時間がかかるのでは。

(終)

※スタジオでキャスターと記者の掛け合いという構成のため、VTRにはナレーションが入っていません。ご了承ください。

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