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西九州新幹線 開業から1年 経済効果など 沿線地域の課題【佐賀県】
2023/09/21 (木) 18:40

西九州新幹線の開業からまもなく1年です。開業効果を実感する沿線地域と在来線の利便性が低下した地域、それぞれの“今”をあす22日まで2回にわたってお伝えします。今回は武雄市と嬉野市、観光客が大幅に増える一方、この1年で見えてきた課題もあります。
【乗客】
長崎から「自家用車でしょっちゅう来てたんですけど、何年ぶりか…新幹線に乗ってみたいと思って来ました」
宮崎から「今までで一番新しい新幹線できれいだった。もっと乗っていたかった」
全長約66キロ、武雄温泉から長崎間で開業した西九州新幹線。コロナの5類移行や全国旅行支援なども相まって沿線の武雄市や嬉野市には県内外からの観光客がひっきりなしに訪れています。
【乗客】
※東京から「3000ねんのきをみにいった」
「かもめ乗れるから(武雄に)来たんだもんね息子と楽しみたいと思います」
西九州新幹線の月別の利用者は、8月までの11カ月で221万6000人。1日平均で6000人余りが利用したことになります。
コロナ前・2018年の在来線特急「かもめ」の利用者の102%に相当し、運行するJR九州のトップも一定の開業効果、手応えを感じています。
【JR九州 古宮社長】
「九州新幹線(鹿児島ルート)でもこの1年間ではコロナ前の85%くらいなので、その分の差15%くらいは開業効果ではあったのかなと。大きなトラブルもなかったということで80点はやっていいかなと。そういう面では合格点」
こちらは、九州経済調査協会が予約サイトのデータを元に宿泊施設の稼働率を算出した「宿泊稼働指数」です。
武雄も嬉野もこの1年はほぼ全国平均を上回っている状況が分かります。
武雄市の小松市長は新幹線の開業効果として“新たなターゲット”を指摘します。
【武雄市 小松政市長】
「遠方からのお客さんが増えた。関東・関西からのJRを使っての観光客が増えたというのが1つ」
昨年度、武雄温泉駅を利用したのは1日平均で1716人でした。コロナの影響がまだほとんどなかった2019年度と比べると年間約5800人増加しました。
【武雄市 小松政市長】
「交流人口のさらなる増加。エリアで周遊する魅力がこんなにあるんだと1人でも多くの人に知ってもらう。その仕組みを作っていきたい」
【リポート・橋爪和泉】
「武雄市の温泉街では新たに店がオープンしたり、店をリノベーションしたりと新たな動きもあります」
【山里屋 山口和子さん】
「より多くの方に来ていただきたいのでまだまだ頑張らないと」
武雄市の温泉街に店を構える「山里屋」。新幹線の開業で創業183年の老舗菓子店も一大決心、今年、店の改装に踏み切りました。
【山里屋 山口和子さん】
「全然違う雰囲気にして大丈夫かなという思いもあったが、すごくありがたい感想をいただくことが多くて、思い切ってよかった」
西九州新幹線の起点でもある武雄市。開業効果、そして上がった認知度を一過性のものにせず、“また行きたい”と思ってもらうためには行政だけでなく、いかに民間も巻き込んでまちの魅力を磨いていけるかがポイントと言えそうです。
【嬉野市 村上大祐市長】
「旅館も長らくコロナの中で大変痛手を被っていたが、そういったところの業績回復の大きなきっかけを掴むことができたと思っている」
開業の手応えは嬉野市でも。これまで鉄道が走っておらず、市内を訪れる観光客は“北部九州から車”がほとんどだった嬉野にとって長年の悲願だった新幹線、観光客は全国から訪れるようになりました。一方、受け入れる上で課題も。
【リポート・橋爪和泉】
「西九州新幹線は各駅に停車する便が少なく…このように、嬉野温泉駅では半分近くの便が停車せずに通過していきます」
勢いよく通過していく新幹線。1日上下44本のうち、嬉野温泉駅で停車するのは25本です。チェックイン、チェックアウトの時間を中心に停車するいわゆる“観光ダイヤ”、中には2時間近く止まらない時間帯もあります。
【嬉野市 村上大祐市長】
「ダイヤのことに関しては、JR九州に何度も要望をしている。鉄道利用者数を伸ばして、(今後も)増便に対するお願いをしていかないといけない」
交流人口だけでなく、定住人口の増加も目標に掲げる嬉野市にとって、新幹線の停車本数は明暗を分けるポイントですが、JR九州はダイヤ改正について「今後の利用状況を見て検討する」と述べるに留めています。また、市民からはこんな声も。
【嬉野市民】
「皆さん言われているのは駅からこっち(温泉街)までのルートで足がない。気軽に駅に行ける感じではない」
「お客さんに歩いて来られた方もいて、「遠かったですよね?」と聞いたら「遠かったです」と言われるので、もうちょっと充実させてほしい」
この1年、多くの市民や観光客が指摘したのが駅と旅館・温泉街の遠さ。その距離約2キロ、車でも5分はかかり、大きな荷物を持った観光客にとっては難点です。
【嬉野市 村上大祐市長】
「レンタカーであったり、今私どもが実用化を進めようとしている自動運転の車両についてもそうだが、鉄道で来てもらってそこから乗り換えて様々な観光地をめぐってもらう」
嬉野市は事業者と連携し、新幹線の停車時刻に合わせ駅前にタクシー2台を待機させているほか、10月からは自動運転バスの実証実験も行いますが、いまだ決定的な打開策は見出せていないのが現状です。
“日本一短い新幹線”の開業から1年。沿線の地域では、盛り上がりとともに見えてきた課題をどう乗り越え、長期的なまちづくりにつなげていけるかがいま問われています。
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