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軍医になるために台湾へ 戦地になると覚悟し待ち受けていた生活は【佐賀県】

2022/08/10 (水) 18:17

太平洋戦争終結から77年。国のため、軍医として戦地に立とうと、台湾で医学を学んだ男性がいます。最前線に近く、一番最初に攻撃を受けると覚悟して行った台湾での生活は思ってもいなかった平和な生活でした。

【今泉洋太郎さん】
「もうこれでは軍医も足りないということで、軍医になった方が一番良いと」

今泉洋太郎さん98歳。
大正13年1924年に多久市で6人兄弟の5人目として生まれます。昭和17年1942年、旧制小城中学を卒業後、19歳で台湾に渡り、軍医を目指しました。

【今泉洋太郎さん】
「どうせ軍隊にいかないかんのならね、もう、早めに本職の、軍職になろうと。そして、出来たらね医者がいいというふうで私は台湾に行きました」

3人の姉が台湾で生活していて、台北帝国大学にも臨時の医学専門部が設置されていました。当時、台湾は日本が事実上支配していて、多くの日本人が住んでいました。
福岡の門司港から3日間かけて船で台湾へ。戦時中の船旅は命がけでした。

【今泉洋太郎さん】
「我々の1年先輩はね、基隆沖で魚雷にやられてね、そして日本まで帰られなかった」

当時、アメリカをはじめとした連合軍が激しい反撃を始めていて、台湾は最前線に近く、生活に不安も感じていたといいます。

【今泉洋太郎さん】
「あの、沖縄に上がる前にね、台湾に上陸するだろうと我々も思っとった。だから、戦争するならね我々も1番初めやられると思うたら、その前に沖縄に全部上陸した。」

軍医として最前線に行くと覚悟して来た台湾での学生生活は、思っていたものとはかけ離れたものでした。

【今泉洋太郎さん】
「日本人は神様のような感じで扱われていた」

台湾での生活で、日本人は支配階級だということを強く感じたと言います。今泉さんは卒業後に軍医になることを条件に、月に25円が支給される「委託学生」になりました。20円あれば1か月生活出来た当時には十分すぎる支給。それほどまでに当時の医師不足は早急の課題だったといいます。

【原竹凌太朗記者】
「戦争で、怖いなとか、恐ろしいなと思った出来事はありますか」

【今泉洋太郎さん】
「一つも無かったね。だいたいあの戦争は勝ちよる勝ちよるちゅうてね、そして、あの、敵機が来てもね、全然爆弾落とさんです」

しかし戦地では軍医が足りず、3月だった卒業時期が半年前倒しになり、10月31日に。卒業後すぐに南方の戦地に行く事になっていましたが、卒業を目前に終戦。玉音放送は陸軍病院で聞きました。

【今泉洋太郎さん】
「もし戦争がね、ずっと続きよったら、九州はおそらくやられとると思う。はよ済んで良かったなと思いましたね、まあ、引き分けだなという風気持ちで『ホッ』としたよ。」

戦時中、台湾に届く父親からの手紙には、多久に爆弾が落ちたという報告が。平和な台湾での学生生活との差に驚いたと言います。

【今泉洋太郎さん】
「そやけん、日本はだいぶやられとると思って帰って来たけど、そがんなかったなあと思って。丁度、東多久の昔あそこにねあの辺が都会やったから、駅をめがけて爆弾を落としたかなんかしたんじゃないかなと。爆撃でも日本はあんまりやられてないなあと帰ってきてから思いましたよ」

【原竹凌太朗記者】
「一番最初にご家族に会った時はどのような気持ちでしたか」

【今泉洋太郎さん】
「やっぱ嬉しかったよ。私は学生の時に一回も夏休みも帰ってないから」

軍のため、国のためと台湾で学生時代を過ごした今泉さんは、帰国後の1953年、29歳の時に現在の多久市で開業します。

【今泉洋太郎さん】
「診断所作ってね、眼科と表示はしてるけど、内科の方も診てくれんやろうか、医者やもんとして呼びに来られて往診に行ったこともあります。」

91歳で病院を閉めるまでの62年間、多久の眼科医として活躍しました。

【今泉洋太郎さん】
「戦争が終わってしまうと。あー良かったと思って。戦争はしたくないですね。」
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